戦前・戦後を通じて、日本人は長く食糧不足のために栄養失調で悩まされました。しかし、戦後、高エネルギー・高たんぱく質・高脂肪食の欧米食を導入することにより、この問題を解決してきたのです。牛乳・乳製品、肉類、卵類、油脂類の消費量は飛躍的に伸び、かつて見られたビタミンB1欠乏症である脚気やビタミンA欠乏症である夜盲症やあかぎれ等は見られなくなったのです。子供たちの成長も良くなり、免疫能が上昇したために感染症に対しても強くなり、さらに、減塩運動とあいまって脳卒中も減少してきました。
ところが、平成の時代になり、このような食生活の一方的な欧米化に対する弊害が顕著に現れ始めたのです。以前から、食生活が欧米化していく問題点は指摘されていましたが、いつかは止まるだろうと予測していたのですが、なかなかブレーキがかかりそうもないのです。
と言うのは、多くの栄養学者は、普通に身体を動かして生活している人が、慢性疾患にかからないで健康に過ごすには、脂肪のエネルギー比が20〜25%程度が適当だと考えています。実は、平成になって、この上限をすでに越してしまっているのです。つまり、脂肪の摂取量が確実に増え続け、逆に糖質は減少し続けています。この傾向がこのまま続くと、欧米人と同じように、高エネルギー・高脂肪食となり、日本人の動脈硬化は進み、狭心症、心筋梗塞が増大し、大腸ガン、乳ガン、さらに、糖尿病等で悩む人たちも増えてくるのです。今は、世界一の長寿国となっていますが、このことが将来的にも続く保障はなく、欧米化の弊害により、平均寿命も低下してくるのではないかと心配する学者もいます。
もはや、欧米化に歯止めをかけなければならない時なのです。そのためには、日本人が古くから持っていた「和風ごはん食」の良さを見直し、これからの食生活のあり方を考え直す必要があります。
出典「お米と、そのパートナーたち」より
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