滋賀医科大学医学部附属病院 病院長 |
日本人はインスリン分泌が少なく、内臓脂肪がたまりやすい |
日本では20歳以上の男性の約27%、女性の約10%、40歳以上の男性では、3〜4人に1人がメタボリックシンドロームだといわれており、一方、糖尿病患者は、2002年から毎年30万人ずつ増え、約890万人になっています。予備群を入れると全体数は2,010万人ともいわれています。日本人はどちらの疾患にもなりやすい体質なので、注意が必要です。 |
メタボリックシンドロームがある症例では、メタボリックシンドロームがない症例に比べて、糖尿病が発症するリスクが約3〜4倍にもなり、メタボリックシンドロームの診断は、糖尿病の早期発見に有用であることが示されています。 |
食事の「量」と「質」に注目して |
メタボリックシンドロームと糖尿病の発症予防には、運動習慣を見直すとともに、余分なエネルギーの蓄積を防ぐため、食事の量は「腹八分目」を心がけましょう。最近の研究(Science
325: 201, 2009)に、高齢のサルでの食事量の実験がありました。食事からの摂取エネルギー量を30%程度制限したサルのほうが、制限しなかったサルと比べて長生きで見た目も若々しく、心血管病や糖尿病の発症をおさえるということです。食事の量をある程度制限することは、糖尿病の予防に有効なことがわかった実験結果です。 |
以上のような理由から、典型的な日本食をとることをおすすめします。主食は、複合糖質として米(特にグリッセミックインデックスの低い玄米)とし、主菜は、魚、鶏肉などとして、飽和脂肪酸を制限し、野菜、海藻類などを副菜として十分摂取することで、食物繊維を多く摂取することができます。 |
*1 飽和脂肪酸: 牛肉や豚肉などの肉類や乳製品に多く含まれ、融点(溶ける温度)が高く、血中のコレステロール値を上げやすい、脂肪組織にたまりやすいといった欠点を持っています。 *2 コーンシロップ: トウモロコシのでんぷんを酵素と酸で分解してグルコースと果糖の混合液に変えた糖液。砂糖よりあっさりとした甘味で、低温で甘味を増すため、清涼飲料水などに多く使われています。 *3 グリセミックインデックス: 食物に含まれる炭水化物が消化されて一定時間内に血液中に取り込まれる糖の量を、ブドウ糖を摂取したときを100として相対的に表した数値。値が低いほど血糖の上昇度が低く、インスリンの分泌量を低くおさえられます。 *4 ω3多価不飽和脂肪酸: 融点が低く身体によい油です。魚に多く含まれるエイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)は、脂肪肝を抑制し、血流を増加し、血栓症を予防する方向に働きます。 |
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制作・著作 公益社団法人 米穀安定供給確保支援機構 |