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昭和大学医学部小児科 教授 飯倉洋治 研究協力者:坂本泰寿、今井孝成、中川和子、小田島安平 |
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アレルギー疾患は現在、小児の慢性疾患の中で最も患者数が多い疾患であり、近年増加が著しい。アレルギー疾患児の増加と食、家族構成、住居環境などの変化が密接に関係していることが報告されている(1)。しかし、これらの因子がどの様に関係しているかの追及は十分に明らかにされていない。疫学調査はわずかに気管支喘息になされているに過ぎない。どのような食物が即時型アレルギーの原因になっているかの調査によると、本邦における即時型アレルギー反応に対する食物抗原は、従来第3位であった大豆が後退し、1位が卵、2位が牛乳、小麦が3位に上昇した(2)。 |
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全国16の小児科を専門としている医療機関を、平成14年1月4日から平成14年1月31日までの間に何らかの理由で受診した小児患者2,652人である。 |
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データーの解析はマイクロソフト社のEXCELを使用し、統計学的検討はStatViewソフト、カイ二乗検定にて解析した。統計学的有意差はp<0.05とした。 |
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患者背景に関して:平均年齢は表1のごとくアレルギー疾患児では7.36±6.21歳、非アレルギー疾患児では5.86±5.99歳であった。性別はアレルギー疾患児の男児896人(55.8%)、女児707人(44.1%)であった。一方、非アレルギー疾患児に関しては男児520人(49.5%)、女児529人(50.4%)で、兄弟数はアレルギー疾患児2±0.81人、非アレルギー疾患児2±0.83人であった。母親の年齢はそれぞれ36.4±6.02歳と34.4±5.83歳であった。 |
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アレルギー疾患の内訳に関して:図1のごとく食物アレルギー409人、アトピー性皮膚炎680人、気管支喘息1,071人、蕁麻疹45人、アレルギー性鼻炎324人、アレルギー性結膜炎87人、花粉症109人であった。食物アレルギー409人の原因食物は図2のごとく卵、牛乳、小麦の順で多かった。 |
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家庭での除去食品の内訳に関して:図3のごとく卵、牛乳が高く、小麦がその次に多かった。 |
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朝食の摂取率と主食の比較に関して:図4のごとく毎日朝食を摂取している割合は、アレルギー疾患児1,533人(95.6%)、非アレルギー疾患児9,803人(93.4%)であった。 |
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副食に関して:図5のごとくチーズ、ジャム、ハムにおいては、アレルギー疾患児の摂取率が有意に高かった、(p<0.01)。一方、卵においては非アレルギー疾患児のほうが摂取率が高かった。 |
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夕食摂取に関して:図6のごとく、毎日夕飯を摂取している割合はアレルギー疾患児では1,587人(99%)、非アレルギー疾患児では、996人(95%)で有意差はなかった。 |
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母親のアレルギー疾患の有無に関して:図7のごとくアレルギー性結膜炎をのぞいて、食物アレルギーの割合はアレルギー疾患児の母親95人(5.9%)のほうが、非アレルギー疾患児の母親34人(3.2%)より有意に多かった(p<0.01)。 |
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母親の食物アレルギーの内訳に関して:図8のごとく食物アレルギーをもつアレルギー疾患児の母親では卵の摂取率が有意に高かった(p<0.01)。両群の食物アレルギーの原因食品では、牛乳、小麦、大豆の順で有意差なく出現していた。 |
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アレルギー疾患児の母親と非アレルギー疾患児の母親における小児期の主食の検討に関して:図9のごとくアレルギー疾患児の母親の小児期におけるご飯の摂取率は925人(57.7%)、非アレルギー疾患児の母親の小児期におけるご飯の摂取率560人(53.4%)で差がなかった。 |
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母親からみた子供の性格に関して:図10のごとく活発さ、元気、おとなしい、怒りっぽい、乱暴に関し児の性格を調査した。 |
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ご飯食、パン食による性格の比較に関して:活発さに関してはご飯食957人(51%)、パン食202人(49.7%)であった.おとなしいと答えたのはご飯食882人(51%)、パン食205人(50.3%)であった。 |
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今回我々は、全国16の小児科専門医を標榜している医療機関を受診した患者、2,652人を対象に食に関するアンケート調査をした。何らかのアレルギー疾患を患っている患児は、1,603人で全体の60.4%であった。その内訳は気管支喘息が多く、順にアトピー性皮膚炎、食物アレルギーであった。また、花粉症も含めると、鼻症状を呈するものが4位であった(図1)。前年度の品川区の児童の調査では食物アレルギーが5位であったが、今回の調査では3位と上昇していた。この結果は今回の調査は病児を対象に行ったために食物アレルギーが多いと考えられた。また食物抗原は卵、牛乳、小麦の順で小麦が第3位となっていた。このことは前回の報告と同様の結果で、食習慣が変化してきた結果と言える。また、子供のみで朝食を食べる率が、アレルギー疾患児では26.4%、非アレルギー疾患児は32.2%であった。この理由としては両親共に働いているため、朝忙しく時間がないことが理由として考えられ、次いで、子供の起床時間が遅く、朝食を食べる時間がない等が原因であった。村田らも国民栄養調査の成績から朝食を欠食する率は、昔から今にかけて3.6%から17.2%であると報告し、現在の小児の相当数が、朝食を欠食しているのではないかと考察している(3)。朝食の副食に関する検討で、アレルギー疾患児において、チーズ、ジャム、ハムの摂取率が有意に高かった(p<0.01)。一方で、卵の摂取率は有意に低かった。この結果は興味あるもので、昨年度の品川区の調査と全国的調査と似ていて 、チーズを食べているアレルギー児が非常に多いことである。また、病児を対象に調査したことから、食物アレルギーもより多く合併し、なおかつ除去食の割合は全体の食物アレルギー患者の半数以上も超えていた。 |
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何らかの疾患を有する児童の食生活に関する調査を行った結果、アレルギー疾患児の夕食でパン食が有意に多かった。また副食のチーズ、ハム、ジャムの摂取がアレルギー疾患児に有意に多かったことは、健康な子供の集団調査とも一致し、チーズの摂取とアレルギー疾患児の関係は深い関係があるものといえる。 |
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1) | 三河春樹。:小児アレルギー総論;臨床アレルギー学:宮本昭正編集、414-419,1992。 |
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2) | Iikura Y et al。:Frequency of immediate-type food allergy in children in Japan。 Int Arch Allergy Immunol(118);251-252,1999。 |
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3) | 村田光載。:小児科医からみたこどもの生活習慣病。小児科診療(8);815-821,2000。 |
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4) | 坂本泰寿他。:少量のチーズ摂取にてアナフィラキシー反応を呈した牛乳に耐性を獲得しつつあるチーズアレルギー。小児科(39);871-879,1998。 |
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5) | 衛藤隆。:こどもの生活習慣病の疫学と行政。小児科診療(6);803-808,2000。 |
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制作 全国米穀協会 (National Rice Association)
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