朝ごはんが太りにくいカラダ作りにつながる!?

京都大学大学院
人間・環境学研究科教授 森谷敏夫 先生

 
 「時間がない」「寝ていたい」「食欲がわかない」「食べたり、準備するが面倒」などの理由で、朝食をとらない人が結構いるようですが、それでは、脳のエネルギーが不足してしまい、集中力がなくなって、学校での成績や仕事にも悪い影響が出てしまうかもしれません。しかし、朝食をとらない弊害は、それだけではありません。
ご飯食と高脂肪食比較図  朝食を食べないと、体が栄養不足を感じ取り、エネルギーを消費せずに溜め込もうとするため、太りやすくなってしまいます。また、食事をとることによって増大するエネルギー消費量のことを食事誘発性熱産生(しょくじゆうはつせいねつさんせい)と呼びますが、朝、昼と規則正しく食事をとるほうが、朝食を抜いてお昼に2食分の栄養をとるよりも、その数値が高くなることもわかっています。同じエネルギー量を食事からとる場合、食事回数が多いと感覚刺激によって活動レベルを上げる交感神経活動が活発になり、その結果、エネルギー消費量が増加するからです。
 では、どんな朝食がよいのでしょう。脳のエネルギー源となるブドウ糖を供給するのは、ごはんなどの主食ですから、まずは、ごはんをしっかり食べる。
 こういうと、ごはんをしっかり食べると太ってしまうのではと思っている人はいませんか。
 そこで、私は、食事内容とエネルギー消費量の関係を調べるため、実験を行ってみました。食事内容は、ごはん食(おにぎり2個、卵焼き、豆腐とじゃが芋のみそ汁)と高脂肪食(マフィン1個弱、ハムエッグ、パンナコッタ)をとり上げました。

 その結果、朝食後のエネルギー消費量は1日のエネルギー消費量に換算すると、朝食を抜いた場合のエネルギー消費量は1,350〜1,400kcal。それに対して高脂肪食では1,500〜1,550kcal、ごはん食では1,600〜1,700kcalで推移し、朝食、昼食ともごはん食を食べたときが最もエネルギー消費量が高くなりました。
食事によって変化するエネルギー消費量  また、同じエネルギー量の食事でありながら、ごはん食のほうが高脂肪食よりも満腹感が持続することもわかりました。高脂肪食のほうが腹持ちが良いと思われていますが、脂質は、エネルギー密度が高い(1g=9kcal)ため、実際には同じエネルギー量の食事でも、食事の量(かさ)が少なくなり、満足感が得られにくいことも指摘されています。
 このため、ごはん食のような炭水化物(糖質)の多い食事と比べて、脂質の多い食事の後は、多量の軽食(スナック)をとるという実験結果もあります。これには思い当たる人も多いのではないでしょうか?
 このように、朝食の欠食はせずに、食事は3食きちんととる。そして、エネルギーの消費量が高く、満腹感が持続するごはん食をとる。
 こうした食生活を送ることが太りにくいカラダ作りにつながっていくのではないでしょうか。