私たちの祖先は、米だけでなく、その副産物であるわら糠、米のとぎ汁を、実に有効に無駄なく日常の生活の中で利用してきました。
今でも、地方でみかけるわらぶき屋根の材料として、あるいは細かく刻んで土とともに練り、壁土を補強する材料としても用いられました。ほかに、板間に敷くむしろもあります。このむしろは、ゼンマイやサツマイモ、切ったナス、豆などを乾かすための敷物でもあったのです。また、畑で堀ったサツマイモ、サトイモを運ぶ入れ物(ふご)を「おこ」と呼ばれる担い棒にかけて運びました。あるいは、今でいう「ハンドバック」などもわらで作りました。また、幼児を入れる「籠つぶら」もわらで作りました。
履き物は「わら草履」、雪国で履く「靴」も作りました。雨の日に羽織る「みの」、山仕事へ出かける時の背負(しょ)い子(こ)の「背あて」をはじめ、たきぎに使う柴や薪をくくるのもわら縄、米を入れる袋もわらで作った俵でした。また、正月の神を迎えるために欠かせない「しめ縄」もわら、神社からもらう雑煮を焚く火種も縄綱で、建前の時の神事の「結界」もわら縄です。