テーマ:「ごはん食で味覚を育む」

日本大学名誉教授 冨田寬先生

味覚障害が増える原因

 何を食べてもおいしくない、甘味や塩味、酸味などがよくわからないという味覚障害の疑いのある方が最近増えています。甘いとか、塩辛いと感じるのは、舌や上あごにある、味らいがその味覚の情報をとらえて、神経を通して、脳に伝わっているからですが、味覚障害の多くは、この味らいが壊されて起こることが多いのです。原因は15ぐらいありますが、その主な原因として、食事によるもの、鬱病などの心因性、飲んでいる薬によることが多いのです。そのうち、食事性と薬剤性は、亜鉛不足によるものです。亜鉛は細胞の代謝に深く関わっていて、亜鉛が不足しますと、細胞の再生ができなくなる。すなわち味細胞が、新しくなれないわけです。そのため、味覚障害を起こすのです。

味覚障害の原因

なぜ、亜鉛の摂取不足が起こるのか

 インスタント食品やファストフードの氾濫、無理なダイエットなど、栄養のバランスの乱れが、味覚障害を起こすのです。加工食品には、亜鉛の吸収を妨げてしまう食品添加物が、たくさん使用されているので、知らず知らずのうちに亜鉛不足に陥ってしまいます。

亜鉛が不足しないようにする食生活

 日本人にとって1日に必要な亜鉛の摂取量は、男性12mg、女性で9mgとされています。亜鉛を多く含む食材の代表には、牡蠣があげられますが、もっと身近な食べ物で、実は、亜鉛はきちんと摂ることができるのです。それは、ごはんです。毎日3食ごはんを1杯ずつ食べるだけでも、必要な量の約1/4以上摂取することができます。2杯にすれば半分以上摂れてしまうのです。その上、ごはんが主食ですと、おかずの種類が多くなり、亜鉛を含むおかずも、十分摂ることができます。亜鉛不足をなくし、味覚障害を防ぐためには、主食からも主食以外からも自然と亜鉛が摂取できる、ごはん食をおすすめします。